今回は10年代以降、すなわち現在の女性ヴォーカルロックに関する記事です。
①女性ヴォーカルHR/HMの定着
00年代に一世を風靡した、フィメールゴシック・ムーブメントは下火になりましたが、その影響は、ゴシックメタル以外のHR/HMに波及しました。
まず、注目すべきは、これまで、女性では無理だろうといわれていた、所謂エクスストリーム・メタルの分野(すなわちデス声)においても、次々とデビューしたことです。
これまでも女性ヴォーカルによるエクスストリーム・メタルはホーリー・モーゼスとかアンジェラ・ゴゾウ加入後のアーク・エニミーとかの例がありますが、このように短期間で次々とデビューしたことは初めてです。
まず、アメリカ西海岸からは、マリア・ブリンク擁するイン・ディス・モーメントが、またカナダからはデスボイスとクリーンボイスを使いわけることのできるアリッサ・ホワイト・グラズ擁するアゴニストがデビューしました。
また、正統派HR/HMでは、リジー・ヘイル率いるヘイルストームがメジャーからデビューしました。
北欧からは、女性ヴォーカル1人、男性デスヴォーカル1人、男性ノーマルヴォーカル1人という体制のアマランスがデビューしました。
現在では女性ヴォーカルHR/HMは珍しくもなんともなく、市民権をえて定着したと言っていいでしょう。
それどころか、今やHR/HMの主流は女性ヴォーカルになりつつあるというのは言い過ぎでしょうか?
もともと、HR/HMは「男の、男による、男のための音楽」だったのですが、その男の最後の聖域が崩されようとしているわけですね。
②ヴィンテージロックと女性ヴォーカル
現代では、60年代70年代を思わせるようなヴィンテージなサウンドのバンドがいろいろでてきました。
そのなかで主だった動きは、70年代の初めの初期のブラック・サバスやブラック・ウイドウを連想させるようなサウンドに妖しげな女性ヴォーカルがのる所謂魔女系ロックです。
その代表的な存在としましては、スェーデンで結成された、ヴォーカリストとギタリストが女性であるジ・オウスというバンドです。
残念ながらアルバム一枚で解散してしまいましたが、そのヴォーカリストが新たにルシファーというバンドを結成してシーンに復帰しました。
いずれも魔女のような怪しく艶めかしい歌声です。
③その他の女性ロック・アーティスト
まず、イギリスではアデルがグラミー賞を取ったアデルに続き、フローレンス・ウエルチを中心とするフローレンス・アンド・ザ・マシーンがブリット・アワードに輝きました。
フローレンス・アンド・ザ・マシーンの音楽的な特徴としては、さまざまな音楽ジャンルを包括した独特のサウンドで、ブリティッシュ・インディ・ロックファンにのみならず、プログレシッブ・ロックファンにも注目されました。